国立研究開発法人情報通信研究機構 MSD株式会社
NICTと製薬会社のMSD株式会社(本社:東京都千代田区、社長:ヤニー・ウェストハイゼン、以下MSD)は、MSDのデジタル医学事典「MSDマニュアル」の10言語のデータを、総務省とNICTが進める翻訳データを集積する取り組み「翻訳バンク」に提供し、AI音声翻訳エンジンを強化に協力することで合意しました。これにより、多言語音声翻訳アプリ「VoiceTra」(ボイストラ)の医療分野における翻訳精度のさらなる向上を目指してまいります。
近年、音声翻訳技術にAIを活用する研究が盛んに行われており、その成果を基にした製品やサービスも続々と登場しています。NICTが開発したVoiceTraは、旅行や日常生活のさまざまなシーンで利用できる高精度の多言語音声翻訳を提供しています。昨今、訪日外国人が年々増加し、滞在中に具合が悪くなるなど医療に関連する翻訳ニーズも高まる中、とりわけ精度の高い翻訳が要求される医療分野の強化には、幅広い疾患領域を網羅する多言語のデータが必要とされていました。そのような中、10言語で提供をしている医学事典MSDマニュアルがVoiceTraに貢献できると考え、この度の提携に至りました。MSDマニュアルのデータを翻訳バンクへ導入することによって、VoiceTraの医療領域の翻訳データは取り込み前と比べて3~4倍の量になり、大幅な高精度化が期待できます。今秋には、MSDマニュアルのデータが反映されたVoiceTraをご利用いただける予定です。
NICTで音声翻訳を長年研究してきたNICTフェローの隅田英一郎は、次のように述べています。
「NICTは2020年までに音声翻訳技術を遍く普及させることを目指して世界の「言葉の壁」を越えるという総務省のグローバルコミュニケーション計画の下、音声翻訳技術の高精度化、多言語化、多分野化を推進しているところ。120年にわたり最新医療情報を掲載してきている多言語医学事典であるMSDマニュアルを音声翻訳システムに学習させることは、医療分野における言葉の壁の克服に向けた吉報となるでしょう。」
また、MSD 執行役員 メディカルアフェアーズ統括のリック・サイは、次のように述べています。
「およそ100年前にノーベル賞を受賞したシュバイツァー博士が、人々の命を救うためにアフリカに携行し、またバード提督が南極探検で活用したMSDマニュアルが、今日では最先端の音声翻訳技術に活用され、世界中の旅行者の健康に寄与できることをうれしく思います。VoiceTraへの貢献は、医学情報を通じて患者さんと医療従事者の対話を深めるというMSDマニュアルのミッションと合致しており、大変有意義な取り組みと考えます。」
NICTとMSDは、医療翻訳の精度向上を通じて、グローバル社会における医療従事者と患者さんのコミュニケーションがさらに確実なものとなるよう支援し、両者がともに納得して治療に取り組めるよりよい医療の実現に貢献してまいります。
以上
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)について
NICTは情報通信分野を専門とする我が国唯一の公的研究機関として、豊かで安心安全な社会の実現や我が国の経済成長の原動力である情報通信技術(ICT)の研究開発について基礎から応用までを推進するとともに、産学官連携や事業振興などに統合的に取り組んでいます。
翻訳バンクについて
ニューラル翻訳(AI技術で多用される深い階層構造を持つニューラルネットワークを用いた自動翻訳技術)による自動翻訳の精度向上のためには、ニューラルネットワークのアルゴリズムの改良が有効であることに加えて、翻訳データ量の影響が大きく、さまざまな分野の翻訳データの確保が重要となります。NICT は総務省とともに「翻訳バンク」の運用を進めながらさらなる翻訳データを集積し、日本の翻訳技術の多分野化・高精度化に取り組んでいます。
VoiceTraについて
言葉の壁で困らない社会実現を目指してNICTが開発した多言語音声翻訳アプリです。AI技術を用いて、観光地での旅行会話はもとより、病院、商業施設といったさまざまなシーンで精度の高い音声翻訳を無料で提供しています。世界31の言語に対応しています。http://voicetra.nict.go.jp/
*本アプリのご利用にはインターネット接続を必要としています。その際の通信料金はご利用者様負担となります。
MSDについて
MSDは1世紀以上にわたり、バイオ医薬品のグローバルリーダー企業として人々の生命を救い、生活を改善するために、世界で最も治療が困難な病気のための革新的な医薬品やワクチンの製造に取り組んできました。MSDはMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.が各国(米国とカナダ以外)で事業を行う際に使用している名称です。医療用医薬品、ワクチン、バイオ医薬品およびアニマルヘルス製品の提供を通じてお客様と協力し、世界140カ国以上で事業を展開して革新的なヘルスケア・ソリューションを提供しています。また、さまざまなプログラムやパートナーシップを通じて、医療へのアクセスを推進する活動に積極的に取り組んでいます。MSDは今も、がん、生活習慣病、新種の動物病、アルツハイマー病、HIVやエボラなどの感染病をはじめとして、世界中で人々の命やコミュニティを脅かしている病気の治療や予防のために、研究開発の最前線に立ち続けています。MSDの詳細については、弊社ウェブサイト(www.msd.co.jp)やFacebook、YouTubeをご参照ください。
MSDマニュアルについて
1899年の創刊以来、約120年にわたりMSDが社会貢献事業として提供している包括的な医学事典です。世界中で広く利用されており、10言語(英語、日本語、ドイツ語、スペイン語、フランス語、イタリア語、ポルトガル語、ロシア語、中国語、韓国語)に翻訳されています。現在は、医療専門家向けの「プロフェッショナル版」と一般向けの「家庭版」をオンラインで無償にて公開しています。
ウェブサイト:https://www.msdmanuals.com/ja-jp/
Facebook:https://www.facebook.com/MSDマニュアル-家庭版-1636360353340642/
本件に関するお問い合わせ先
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)
【NICT広報】 広報部 報道室: 廣田
Tel: 042-327-6923
E-mail:
【翻訳に関すること】 先進的音声翻訳研究開発推進センター: 隅田
Tel: 0774-98-6350
E-mail: