―SDGs 実現に寄与する「人材育成×社会課題×ビジネス」の社会システムを構築します―
「防災の日」である2018年9月1日(土)、慶應義塾大学SFC研究所社会イノベーション・ラボ(代表:玉村雅敏、以下SFC研究所)、辻調理師専門学校(校長:辻芳樹)、株式会社mellow(代表取締役:柏谷泰行、以下mellow)、鹿児島相互信用金庫(理事長:稲葉直寿)の4者の呼びかけのもと、「地域おこし×災害支援フードトラックプロジェクト」を発足します。このプロジェクトでは、長島町(鹿児島県、町長:川添健)をはじめとした全国各地の自治体や企業・団体等と協力して、多様な主体を結びつけるチカラを持つ「食」の観点から、「人材育成×社会課題×ビジネス」の相乗効果がある社会システムの構築を推進します。
1.「食による地域おこしと災害支援に関する研究開発に係る連携協定」について 【目的】 SFC研究所・辻調理師専門学校・mellow・鹿児島相互信用金庫の緊密な連携のもと、相互に協力し、地域おこしと災害支援に関する研究開発と多様な主体による連携を促進することにより、SDGs(持続可能な開発目標)の 実現に貢献する「人材育成×社会課題×ビジネス」の相乗効果のある社会システムの構築と、安心で持続可能かつ活力のある地域社会の形成、未来社会を先導する人材育成、実学の促進等に寄与することを目的とします。 ( 連携協力事項 ) 前項の目的を達成するために、次の事項について連携し、協力します。 (1)「地域おこし×災害支援フードトラック」に関わる研究開発と連携促進に関すること (2)食のチカラを活かした地域おこしや社会イノベーションを担う人材育成に関すること (3) 4 者の知的、人的および物的資源の活用に関すること (4)その他、本連携協力の目的を達成するために必要な事項
このプロジェクト開始にあたり、8月31日(金)、辻調理師専門学校(大阪市阿倍野区)にて、プロジェクトの呼びかけを行う4者による「食による地域おこしと災害支援に関する研究開発に係る連携協定」の締結式を開催します。また、締結式とあわせて、同会場にて、記者会見ならびに自治体・企業・団体等を対象としたプロジェクト説明会、長島町のフードトラック(キッチンカー)型アンテナショップである「長島大陸ブリうま食堂」による食材提供のデモンストレーションを行います。 なお、2018 年度後半を目処に、準備が整い次第、大阪市と東京都にて、教育プログラムと連携した「地域おこし×災害支援フードトラック」を運行する予定です。 2.協定締結式・プロジェクト説明会・デモンストレーション(8/31)について 日時:2018年8月31日(金)11:00~13:00 場所: 辻調理師専門学校 (大阪市阿倍野区松崎町 3-16-11/http://www.tsuji.ac.jp/access/) 出席者: 玉村雅敏 (慶應義塾大学総合政策学部教授/ SFC 研究所社会イノベーション・ラボ代表) (予定)辻芳樹 (辻調理師専門学校校長) 大迫哲也 (鹿児島相互信用金庫常務理事) 柏谷泰行 (株式会社 mellow 代表取締役) 川添健 (長島町長) 発表者:太田良冠 (慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科、鹿児島県長島町地域おこし研究員) 尾藤環(辻調理師専門学校企画部部長) 対象者:報道関係者、プロジェクトに興味がある自治体・企業・団体等の方 ※ 資料やデモ食材(無料)等の準備のため、事前にメールにてご連絡をお願いいたします。 (送付先:food-truck@sfc.keio.ac.jp 送付内容:ご所属・お名前・連絡先・参加人数)
左:「長島大陸ブリうま食堂」(長島町のフードトラック型アンテナショップ)右:長島町「ブリデカ弁当」
3.「地域おこし×災害支援フードトラックプロジェクト」について 「防災の日」である9月1日に、産官学連携による活動として「地域おこし×災害支援フードトラックプロジェクト」を発足します。このプロジェクトは、慶應義塾大学SFC研究所 VCOM コンソーシアム(参考1)に設置する研究開発プロジェクトとして、幅広い参画や連携を得て推進します。 「地域おこし×災害支援フードトラック」は、 SDGs の実現に寄与するものとして、幅広く連携の呼びかけを行 い、多様な主体とのパートナーシップのもとで推進するとともに、その研究開発の成果は、大阪や東京での活用 をはじめ、日本全国、さらにはグローバルに活用していきます。 <「地域おこし×災害支援フードトラックプロジェクト」の活動内容> (1)人材育成システムの構築 ①「地域おこし×災害支援フードトラック・プロフェッショナル育成プログラム(仮称)」の開発 調理技術を持ちながら「食のチカラを活かした社会課題解決」と「地方創生と都市災害リスク軽減を担うフードトラック事業」を推進できる人材育成を行うプログラムを、2019年度に辻調理師専門学校に開講させることを目指して、辻調理師専門学校・mellow・SFC研究所の連携協力のもとで研究開発を推進します。同プログラムでは、求められる調理技術の習得に加えて、フードトラック運営、食による地域おこし、創業や事業化、SDGsと料理のチカラ等の実践的な学習を行うことを想定しています。 ②「地域おこし研究員」による「地域おこし×災害支援フードトラック」の実践研究 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科と全国の自治体・団体が推進する「地域おこし研究員」プログラム(参考2)での研究開発テーマとしての活用や、同プログラムに関わる研究員や大学院生が①の受講を可能とすることを検討します。 ( 想定される人材像(例) ) ・「食」による社会イノベータ:地域の豊かな「人のつながり」や「地域資源」をもとに、「食」のチカラを活かした社会課題解決と事業構築を先導できる人材 ・「食」による高校魅力化コーディネータ:食材生産地域の高校生と都市部の料理人・大学生・専門学校生とのコラボレーションによる相互学習を推進できる人材 ・「食」起点の6次産業化コーディネータ:3次産業の最先端である都市部の「食」の現場で活躍する料理人が、地域おこしの視座をもちながら生産地域と関わり、相乗効果を実現できる人材など ③「地域おこし料理人支援パッケージ(仮称)」の開発 そうしん地域おこし研究所(参考3)において、①を受講する際の経済的な負担を軽減する奨学ローンの開発や、受講生が行う創業や事業化の支援パッケージ(例:地域の生産者や中小企業・自治体等のネットワークを有する信用金庫によるマッチング支援、地域と連携した創業や金融等の支援など)などの開発を行います。その成果は、全国の信用金庫や金融機関等での活用を呼びかけていきます。 (2)社会課題×ビジネスの社会システム構築 ④「地域おこし×災害支援フードトラックシステム」の開発 フードトラックについて、日本最大級のモビリティサービス・プラットフォームTLUNCH(参考4)を提供してきたmellowの知見を活かして、産官学金連携で、全国各地の自治体が提供するフードトラックを都市部にて走らせる事業モデルを検討します(下図参照)。このフードトラックは、平時には、「都市部での食環境の充実」や「昼食の入手困難性の軽減」「(移動型アンテナショップとして)生産地と都市部とのつながりの希薄化の軽減」などを担うものです。また、災害の発災時には、「フードトラックの機動力や食材の加工やストックを行うセントラルキッチン機能」や「地域や平時営業スペースと連携した活動モデル」「料理人によるボランティア拠点形成機能」などを活かした、災害時の食の不安とリスクを軽減することに取り組みます。①の人材育成プログラムと連携した仕組みとして、持続的に機能するものを構築します。研究開発にあたっては、長島町のフードトラック「長島大陸ブリうま食堂」(参考5)と、mellowのフードトラックを活用した事業を行い、その成果を活かしたシステム構築を推進します。 ⑤「地域おこし×災害支援フードトラック研究会」の開催 都市部や生産地の自治体、金融機関、企業、大学・専門学校等に呼びかけを行い、共同研究を行う研究会を発足させます。(参加希望の自治体・組織等はfood-truck@sfc.keio.ac.jp までご連絡ください)
【参考1:慶應義塾大学SFC 研究所「社会イノベーション・ラボ」「VCOM コンソーシアム」とは?】
慶應義塾大学SFC 研究所は、21 世紀の先端研究をリードする研究拠点として、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)における教育、研究活動と、産官学および国内外のあらゆる関連活動との双方向の協調関係を育みながら、その研究成果によって、未来に貢献することを目的としています。本リリースの研究開発プロジェクトは、SFC研究所に設置された「社会イノベーション・ラボ」と「VCOMコンソーシアム」がその推進に関わります。 社会課題の解決をもたらすには、科学技術が社会に実装されることによって促進される側面(科学技術イノベーション)と、新たな商品・サービスや制度・組織などが作られることによって、人々のつながりや相互作用に変化をもたらすことで促進される側面(社会イノベーション)の双方があります。社会課題解決の実現において、この「科学技術イノベーション」と「社会イノベーション」の2つのイノベーションの相乗効果が重要となります。SFC研究所「社会イノベーション・ラボ」では、社会をよりよい方向に変えるための「社会イノベーション」のあり方やその実践モデル、支援ツール、科学技術イノベーションと社会イノベーションの相乗効果の実現モデルなどの研究・開発に取り組んでいます。 また、従来、社会的な問題を解決するアプローチは「政府や行政にお任せ」または「市場を通じた企業活動に委ねる」のどちらかの選択肢しかないと考えられてきました。しかし、近年、教育、福祉、食の安全・安心、環境、オープンソースソフトウェア開発などの分野で、関心と熱意を共有する人々が自発的に集まって知恵と力を出しあうという第三のアプローチとして「コミュニティ・ソリューション」が注目されています。1995年の阪神淡路大震災の被災者支援を契機にスタートしたSFC研究所「VCOM コンソーシアム」は、NPOや市民団体がインターネットを利用して「ネットワーク・コミュニティ」を作ることを支援してきました。また、教育分野とコミュニティマネジメントの領域での具体的な改革の提案(コミュニティスクール構想など)を行い、それを促進するためのインターネット・ツールを提供するなど、先端的な社会実験を通じた実践研究を行ってきました。 【参考2 :「地域おこし研究員」について】
「地域おこし研究員」とは、SFC研究所社会イノベーション・ラボと長島町(鹿児島県)・神石高原町(広島 県)・三条市(新潟県)・釜石市(岩手県)・鹿児島相互信用金庫(鹿児島県)・大山町(鳥取県)・能代市(秋田県)・ 大崎町(鹿児島県)・東川町(北海道)・花巻市(岩手県)・邑南町(島根県)等が共同で提唱・検討・推進をして いるものです。SFCと連携する自治体・組織が、総務省「地域おこし協力隊」制度や、独自制度・職員派遣制度 等を活用し、地域に在住しながら、地域の現場で実践的な研究活動を行う SFCの大学院生等を対象に、自治体・ 組織の選考により任用や任命されるものです(自治体等の選考や任命と、大学院の入学試験は連動しません)。 「地域おこし研究員」は、SFCからの遠隔と 対面での研究指導・支援のもと、地域に新機軸を 実現するテーマを設定して活動するもので、地方創生の実学を推進しながら、地域が抱える課 題を、多様な主体の協働や連携を実現すること で、共に解決することを目指します。 SFCでは、大学院政策・メディア研究科(社会イノベータコース)にて、遠隔と対面の助言や 研究指導を行い、実践的な研究成果を達成でき るように支援します。また、各種の講義や演習をEラーニングやビデオ会議のシステムを用い て、遠隔受講できるようにすることや、現地での 実践的な研究活動を行いながら学ぶからこそ効 果的に学習できる授業設計を行っています。 2018年8月の時点で、長島町・神石高原町・ 三条市・釜石市・鹿児島相互信用金庫にて、6名の「地域おこし研究員」が任用・任命され、活動をしています。 「地域おこし研究員」の実践紹介や募集・任用に関する詳細は、慶應SFC「地域おこし研究員」Webサイトや、 説明会(8/29(水)18:30より慶應義塾大学三田キャンパス、8/31(金)18:30 より慶應大阪シティキャンパスで開催)にてお知らせします。参考:「地域おこし研究員」Web サイト(http://si.sfc.keio.ac.jp/si-researcher/) 【参考3 :「そうしん地域おこし研究所」について】
そうしん地域おこし研究所は、2017年8月に鹿児島相互信用金庫が、SFC研究所社会イノベーション・ラボの助言・支援のもと、鹿児島県の自治体や大学との協力関係を構築し、地域おこしを推進していくために設立したものです。信用金庫らしい、地域と一体となった地域活性化への先進的な取組みを研究・開発し、実際に地域で実践することで、地域・企業・信金が相乗効果を発揮して発展する、実学の研究を行うことを目的としています。その成果は、信用金庫の全国ネットワークを活かして、全国各地での地域おこしにも貢献します。
(これまでの主な取組み) ・長島町(鹿児島県)における「ぶり奨学プログラム」の共同開発 ・西之表市(鹿児島県)における「地域創生コラボ免許合宿プログラム」の共同開発 ・移住・定住を促進する「空き家定住プログラム」の共同開発 ・大崎町(鹿児島県)における「リサイクル未来創生プログラム」の共同開発など 【参考4 :青空シェフごはんTLUNCH< トランチ> について】
TLUNCHは、こだわりの料理を提供するフードトラックと、ビルの空きスペースをマッチングするフードトラックプラットフォームです。様々なメニュージャンルを扱う400店のフードトラックと提携し、都内を中心に80ヶ所でランチスペースを展開しています。TLUNCHでは、出来立ての料理を日替わりで楽しめる仕組みや、いつ、どこで、どんなお店がどれだけ売れたのかをデータ分析して、最適配車をする独自システムによって、お客様が毎日飽きずにランチを楽しめるという体験を実現しており、2016年5月のサービス開始以来、累計食数100万食、累計流通額7億円を突破しました。 これまで料理人の自己実現の舞台は固定店舗がメインでした。しかし、初期費用に1000万円程かかる上、毎月の家賃や人件費、採用費、広告費などが重くのしかかり、2年以内の廃業率は49.7%と約半数にものぼります。このように立地に大きく左右される固定店舗の飲食店経営は非常に難しいものでした。一方フードトラックは、固定店舗の5分の1の費用で開業できます。さらに、TLUNCHに登録することで、営業場所や集客サポート、売上の分析データを享受できるため、シェフが料理や接客に専念することが可能に。そのため、こだわりの料理やサービスを提供するフードトラックが続々とデビューし、チェーン店では味わえない魅力的なサービスが人々から支持を集めています。 TLUNCH を運営する株式会社mellowは、代表の柏谷をはじめ、IPO経験者を複数有する経営チーム、15年以上にわたり、フードトラックによるスペース活用を展開してきた食の運営スペシャリストが集う食チーム、データアナリスト、ITソフトウェアエンジニア、デザイナーを有したテクノロジーチームといった「ビジネス×食×テクノロジー」で構成されたチームによって、料理人のように専門職を持った個人のための自己実現の場を、モビリティによって実現する「モビリティサービス・プラットフォーム」を展開しています。参考:Webサイト(https://www.mellow.jp/ )
【参考5 :「長島大陸ブリうま食堂」について】
本プロジェクトで活用するフードトラック「長島大陸ブリうま食堂」は、2016年3月より、東町漁協(本部:長島町、代表理事組合長:長元信男)が設立した株式会社JFAが運営する、大都市圏で運用するアンテナショップ機能を持ったフードトラック(キッチンカー)です。東町漁協は、全国に先駆けてぶりを本格的に養殖。1982年には対米輸出を開始、1998年には国内で初めてEUの厳格なHACCP認証を取得するなど弛まない挑戦を続け、現在では世界30か国にぶりを輸出する世界一のぶり生産高を誇っています。
株式会社JFAは、東町漁協のさらなる挑戦として、加工品販売、鮮魚販売、食堂運営などを目的とし、2016年9月、漁協としては日本で初めて設立された株式会社です。長島町は、世界一の養殖ぶりを始め、内海の八代海と外海の東シナ海に囲まれた環境の中で、タイ、タコ、伊勢エビなど多様な海産物に恵まれています。また、牛、豚、鶏、柑橘、じゃがいも等の農産物も美味しいと評判であり、「長島大陸ブリうま食堂」では、長島の特産物をお弁当の形で都市部の生活者に直接提供し、長島町の知名度の向上を図ることにも取り組んでいます。