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ベンチャー型事業承継により経営革新を果たした企業の事例

更新日:2018年8月28日

〈ミラサポ〉


近畿経済産業局のベンチャー型事業承継ポータルサイト「ぼくらのアトツギベンチャープロジェクト」では、ベンチャー型事業承継により承継を果たした企業の事例を多数紹介しています。今回は、その中から2件の事例を紹介します。


事例1 仏壇製造技術を活かした新商品で世界へ挑む後継者



ベンチャー型事業承継|中小企業

株式会社井上(滋賀県彦根市)は、1901年に創業し、伝統的工芸品である「彦根仏壇」の製造販売を営む企業。 同社代表取締役の井上昌一さんは、大学在学中に家業を継ぐことを勧めてくれていた祖父が亡くなり、「自分が継ごう」と覚悟を決め、同社に入社しました。

主力商品である仏壇の需要が低迷する中、同社では2009年からカップやトレーなどの雑貨ブランド「chanto(シャント)」を開発し、製造販売しています。



ベンチャー型事業承継|中小企業

新商品開発のきっかけは、経営コンサルタントから「仏壇製造技術で世界に通用する商品を作ったら面白い」と助言を受けたことでした。 まずは花器や壁掛けなどを製作し、ニューヨークでの展示会(日本貿易振興機構のブース)に出展しました。そこで、展示会に携わる関係者などから新商品開発の進め方や公的補助金の活用方法を学んだことで、その後の本格的な商品開発を行うことができたのです。 自分たちに欠けていたデザイン力を補うため、デザイナーとコラボレーションした日用品の開発に取り組み、これを見本市や展示会に出したところ、「仏壇屋が作る日用品」としてメディアに取り上げられ、既存商品の広報宣伝にもつながりました。

同社は新たな商品開発にも意欲的です。海外の富裕層をターゲットとして、高級な機械式腕時計を入れておくケース「ウォッチワインダー」の提供を始めました。これは仏壇職人の高度な技術をフルに活かした商品で、華やかな金の装飾などが海外の人に高く評価されています。今後は販路開拓に注力していく考えです。


事例2 他業界の販路開拓と自社ブランド商品の展開に取り組む後継者



ベンチャー型事業承継|中小企業

株式会社西村プレシジョン(福井県鯖江市)は、極薄の老眼鏡「ペーパーグラス」を製造・販売する企業。鯖江市で50年間チタン切削加工を営む、株式会社西村金属の貿易部門子会社として1993年に設立されました。 西村プレシジョン代表取締役の西村昭宏さんは、 大学を卒業後、IT関連企業に就職しました。

しかし、眼鏡産業は安価な海外品に押されていて、2003年、西村金属は経営危機に直面。父から「家業を手伝ってほしい」と言われた西村さんは、鯖江市に戻り、経営の建て直しを図りました。



ベンチャー型事業承継|中小企業

西村さんは、眼鏡産業で培ったチタン加工の技術を他にも活かそうと考え、自社のホームページを作って製造技術を公開しました。他業界の顧客開拓に挑んだのです。 試行錯誤の末、半年ほどで問い合わせが増え始め、5年で売上は2.5倍、その8割を眼鏡以外が占めるようになりました。やがて、志を同じくするチタン加工技術を持つ複数の会社と共に、地域ブランド「チタンクリエイター福井」を立ち上げました。スケールメリットを活かした共同受注により、取引先は、医療、半導体、航空機などさまざまな業界に拡大しました。

一方で、リーマンショックをきっかけとして、自社ブランドの必要性を感じた西村さん。2012年に西村プレシジョンの代表取締役となり、老眼鏡「ペーパーグラス」の製造販売を開始しました。 厚さわずか2mmで機能性と美しさを兼ね備えた同商品は、「2013年度グッドデザイン賞」を受賞し、ミラノファッションウィークの見本市「WHITE MILANO」に出展するなど、世界一の老眼鏡ブランドをめざし、海外にも展開を広げています。


民の立場からベンチャー型事業承継を推進


ベンチャー型事業承継を支援する民間による取組も始まってきています。 株式会社近畿大阪銀行では、大阪府内の3商工会議所と連携して成功事例を紹介するセミナーを開催するなど、ベンチャー型事業承継を支援しています。後継者による成長プランの具体化を支援することで、地域活性化を図り、融資などビジネスチャンスの拡大につなげる見込みです。



ベンチャー型事業承継|中小企業

他にも、2018年6月には民間企業の経営者が中心となり、ベンチャー型事業承継を支援する「一般社団法人ベンチャー型事業承継」(東京都千代田区)が設立されました。山野さんが発起人で、代表理事に就いています。同団体は若手後継者を対象に、官民さまざまな組織と連携し、研修事業やイベントなどの教育プログラムを提供していきます。

山野さんは同団体の設立趣旨を次のように語ります。 「国による支援の場合、年度替わりの時期にどうしても空白期間ができてしまいます。そこで、産業界からも新しい『波』を起こして継続した取組とすることを目指し、設立しました。従来の支援機関だけでなく、若い人たちに発信力のある団体や企業と組み、潜在的な後継者に向けても発信することを目指しています」

同団体は、当面は事例紹介・情報発信に注力していきますが、教育プログラムとして大阪を中心に開催してきたアイデアソン(新しいアイデアを生み出すためのイベント)や研修などを東京などでも開催する予定です。その後は個別で事業化、資金調達、体質強化支援などに対応していきたいとしています。 「ベンチャーと言っても、新規株式公開(IPO)する企業を増やすことが目的ではありません。地域に根を張り、会社を永続させるために新しいビジネスに挑戦する人たちを対象としています。年商1兆円企業を1社輩出するよりも、10億円企業を各地で100社出す方が有意義だと考えています」(山野さん) 家業という資源を活かし、新しい挑戦をする動きが全国各地に広がっています。


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