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日本のナパ・バレーを創る!共感経営で地域を活性化


【株式会社 欧州ぶどう栽培研究所】

1992年、新潟市郊外の日本海沿いの砂丘地帯に1軒のワイナリー「カーブドッチ」が誕生した。ここを経営するのが欧州ぶどう栽培研究所である。今ではレストランからスパ、ホテル、結婚式で人気のホールまでも兼ね備え、近隣には新たに4軒のワイナリーが開業した。一帯は「新潟ワインコースト」と呼ばれ、年間30万人が訪れるワイナリー・リゾートとなった。なぜ1軒のワイナリーがこれほどの事業拡大ができたのだろうか。その成功の軌跡を探った。


【この記事のポイント】

  1. 「東京で売るのではなく、東京からワインを買いに来てもらう」をコンセプトとした事業展開

  2. ワイン以外にも6次産業化を展開、消費の場も提供し事業を多角化

  3. ぶどう生産農家だけではなく、同業者も育成し、地域で共存共栄できる経済圏を形成


欧州ぶどう栽培研究所が経営する「カーブドッチ」は、欧州系ワイン専用品種のぶどうを自家栽培し、自家醸造するワイナリーとして誕生した。創業当時の「国産ワイン」の規定では、輸入した果汁で醸造するもの、輸入ワインを混ぜて国内で瓶詰めするものも「国産」に分類されていた。実際、そのようなものも少なくなかった。だからこそ、カーブドッチは本物の国産ワインを「ここに来てもらい、見てもらい、買ってもらう」という米国ナパ・バレーを手本としたワイナリー・リゾートを創業時から目指していた。


カーブドッチが大きく発展した理由は、「強固な顧客基盤」「多角化と6次産業化の進展」「地域産業として持続可能な収益構造」を確立したことにある。



中小企業|経営者|成功事例

今井卓・代表取締役社長


夢に共感したファンを集め固定客を創る

同社は創業時、多くの企業が陥りやすい資金繰りの問題に直面した。その対策として、「ぶどうの木のオーナー」制度を考案。これは、1口1万円で会員になり、毎年1本のワインを10年間受け取れるというものである。ぶどうの木には会員番号が付いており、ワイナリーに行って自分の木の成長を確かめることもできた。ワイナリーに、自分のぶどうの木をもつことに夢を感じた人も多かったのであろう。なんと1万人以上の会員が集まり、資金難を乗り越えただけではなく、強固な顧客基盤も形成することができた。



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顧客・農家・同業者を育成し、「事業」から「産業」へ

ナパ・バレーのようなリゾート誘客型ワイナリーを実現するために、まずレストランを作った。そもそもワイン造りはぶどう栽培、ワインへの加工・販売といった6次産業の形態が確立しており、その消費の場としてのレストランを直営することにより、すべて自分たちで完結することができるようになる。

しかし、冬場の天候の悪い日には、来客ゼロの日も珍しくなかった。そこで集客対策として、温泉を掘りスパとホテルを作ったのだ。源泉はワイナリーから近い角田山の麓にあるが、レストランとの相乗効果を狙ってワイナリーの敷地内に作ることにした。その結果、年間を通じた来客数が安定し、経営は軌道に乗った。

次の取り組みは、新潟を北海道や山梨のようなワイン産地にすることだった。1軒だけではどんなに頑張っても6次「事業」である。地域の6次「産業」にまで発展させることで、ワイン産地にしたいとの強い想いがあった。契約農家を開拓し、新潟の土地に適したワイン専用品種を栽培してもらった。



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「ワイナリーが特殊な方法で栽培したものだけをワインにするのではなく、新潟の農家さんが栽培したものを、われわれがおいしいワインにするのがコンセプト」と、今井さん。農家が営農作物として取り組むことができないと、地域産業として根付かないとの考えが根底にある。

そして、仲間作りである。ワイナリー経営塾を開講し、1年かけてノウハウを伝え、創業支援も行った。周辺には、卒塾生が経営する4軒のワイナリーが誕生し、「新潟ワインコースト」となった。自ら競合を作っているようにも見えるが、1本の木としてではなく、森となって発展することで、ワイン産地になるとの考えである。「『本当にできるの?』という問いに、『できます』と言い続けてきた。2軒目のワイナリーができたときには、同じことを答える仲間ができて心強く思った」(今井さん)。


新潟のおいしさを味わう!地域に根ざしたワイナリー・リゾートへ

カーブドッチのワイン造りは、効率性よりも顧客のさまざまな好みに応えることを優先するため、生産量の増加ではなく、種類を増やすことに注力している。ワイン以外の6次産業化として、小麦栽培からのパンやビール作りや越後もち豚のソーセージやハムへの加工を手掛け、売店販売とレストランでの提供を行っている。現在では、売上に占めるワインの割合はわずか2割に満たないほどになっている。

そして2019年秋には、『ワイン』と『食』を存分に堪能できる、レストランに宿泊施設を併設したオーベルジュがオープンする。『ワイン』を機軸として地域のさまざまプレーヤーを繋ぎ、持続的な産業を育成するカードブッチは、地方創生の理想的な事業モデルの一つと言えよう。



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新潟を一大ワイン産地にしたいと語る、今井社長


《企業プロフィール》

代表者名 代表取締役 今井 卓

設立年 平成4年4月

所在地 新潟県新潟市西蒲区角田浜1661

資本金 1,000万円

従業員数 150名(パート、アルバイト含む)


《中小企業診断士からのコメント》


カーブドッチはワインの生産規模拡大を追うのではなく、ワインをコア事業とし、関連事業を展開することで成長してきた。つまり、高品質な本物のワインを、コンセプトに共感できるファンに対し、それを味わい楽しむ時間と空間を提供することで発展してきたのである。別の視点では、原材料生産者、顧客、そして競合までもがカーブドッチのコンセプトに共感することで一つの経済圏を形成しており、地域活性化の成功事例とも言える。

成長の過程においては、中小企業技術革新制度(SBIR)、農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)なども活用している。中小企業の皆さまのための支援制度は数多くあるため、それらを有効に活用することで成長につなげていただきたい。

渡邊一弘



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#欧州ぶどう栽培研究所

#共感経営

#地域活性化

#地方創生


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